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《降谷夢》bonheur {R15}

第71章 懸命



銀行強盗達が立て篭もり始めてから30分程経った。


犯人達は銀行の奥にある金庫でお金を詰め終わったのか
パンパンになった鞄を抱えてぞろぞろと出てきた。


私は間隔的にくる陣痛にずっと耐えていて、
秀一くんはそんな私の額の汗をタオルで拭ってくれた。



『昴さん、ありがと…っ、いったぁ…。』

「頑張れ美緒。きっともうすぐ何か動きがあるはずだ。」


秀一くんの言葉に頷いていると、外から笛の音が聞こえてきた。
外で何かを誘導でもしてるのかと思ったけど
その割には笛の吹き方が変な間隔で…


静まった銀行内にはその笛の音はよく響き、かなり聞き取りやすかった。



『1分後……停電……』

「モールス信号か。…さすが美緒の旦那だな。」


…やっぱり零くん来てくれたんだね。
1分後に停電すると分かり、秀一くんは目を閉じていた。

私は隣に座っていた女性の手を握り、コソッと耳打ちした。


『もうすぐ銀行内の電気が切れますが…
絶対に騒いだり……立ち上がったりしないで下さい。』

「え、えぇ。分かったわ…。」


女性が頷いているのを見ていると
銀行強盗達が私たち人質に銃を向けた。


「さーて、誰を人質にして逃げる?」
「誰でもいいけど、やっぱ男より女じゃね?」
「だな。一番後ろにいる銀行員の女で。」
「よし。じゃあ他の客達は始末するか〜。」


犯人達がそう言うと、人質達はみんなブルブルと肩を震わせ怯えてしまい、男達は銃を構えながら徐々に私たちの元へと近づいてきた。


…大丈夫。もうすぐ1分経つから…


心の中でそう唱えていると
私の目の前に犯人の男が1人立ち止まり銃口を向けた。


「子供と一緒にあの世へ送ってやる。悪く思うなよ?」

…あの世?

『…ふふっ。』

もう私を殺した気になっている男の発言がおもしろくて
私はつい笑ってしまった。


「あん?何がおかしい。」

『終わるのは私の人生じゃなくて…あなた達の人生だよ。』




私が犯人にそう告げると
銀行内は全ての照明が落ち、真っ暗闇に包まれた。



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