第71章 懸命
気を引き締めたところで規制線が張られている場所に到着し
車を降りて裏道を通り銀行に近づいた。
「これ以上は近づけないな。」
顔を見られるわけにはいかないし…
どうしようかと考えていると、たくさんいる刑事の群れの中に松田と伊達班長の姿を見つけた。
僕はスマホを取り出し松田に電話をかけ
建物の物陰から様子を見ていたが、松田は電話に気づいたようで応答してくれた。
「悪ぃけど今取り込み中だ。掛け直してくれ。」
「8時の方向だ。」
「はぁ?」
僕の言葉を聞いた松田はこちらを向き目が合った。
何かあると悟ってくれたようで、班長にも声をかけてこちらに向かってきた。
松「お前…何でこんなところにいんだよ。」
「…美緒があの中にいるんだ。」
松「!?はぁ!?」
伊「それは本当か!?」
「ああ。GPSを確認したから間違いない。
それに…美緒から着信があってすぐに折り返したが、ずっと繋がらない…。」
2人は銀行内に美緒がいると分かって頭を抱えていたが、今の状況を詳しく説明してくれた。
伊「犯人達が立て籠ってから30分経ったが、こっちから呼びかけても応答なしだ。」
松「人質は銀行職員含めて20人くらい、
犯人達は恐らく5人で顔は隠してなかったらしい。
つーことは…」
「…人質は生きて帰すつもりはないって事か……。」
僕の言葉に2人は否定も肯定もしなかった。
きっと待機している警察官はみんなそれを分かってて
今の最悪な状況をどう打開しようか悩んでいるんだろう。