第71章 懸命
side 降谷
警視庁で会議を終えた僕は、公安部へ戻る為
風見と共に通路を歩いていた。
その時…
ブーッ…
僕のスマホが振動したと思ったらワンコールだけで切れてしまった。
風「?電話ですか?」
「ああ…美緒からだな。」
すぐに掛け直したが、コール音がするだけで全く出る気配がない。
……なんだ…
すごく嫌な予感がする…。
「風見、急いで戻るぞ。」
「は、はい!」
公安部に戻り、美緒のGPSを確認すると
どうやら今は東都銀行にいるようだった。
「ふ、降谷さん…確かこの銀行って…!
おい誰か!テレビつけろ!」
「は、はいっ!」
部下の1人がテレビをつけると
そこには何度か見たことがある僕と美緒の住まいから割と近い銀行がテレビに映っていた。
[現在も銀行強盗達は立て籠ったままで、中にいる人質の安否は確認できていません。
通報者からの証言によりますと、銃の発砲音が聞こえた後
すぐに銀行入口のシャッターが閉まってしまったとのことです。
警察は現在、東都銀行に厳戒態勢を敷いているようですが、中に複数の人質がいる為、身動きが取れない状態が続いています。]
テレビから銀行強盗のニュースが流れてきて
僕の背中に嫌な汗が流れた。
「嘘だろ…?っ、…美緒…」
「降谷さん、とりあえず銀行に向かいましょう!
車出します!」
「ああ…頼む。」
風見と共に警視庁を出て急いで現場に向かった。
車に乗っている時に思い浮かんだのは
今朝、お腹を大事そうにさすりながら仕事に向かう僕を見送ってくれた美緒の笑顔。
心配で心配で…
もし美緒に何かあったらと思うと怖くてたまらない。
しかし弱音など吐いたところでどうにもならない…
震える手を自分で押さえつけ、奥歯をギリギリと噛み締めた。
「降谷さん…きっと若山さんは無事ですよ。
お腹の子だって…絶対2人を助けましょう。」
「…ああ、そうだな。
僕がこの手で…必ず救ってみせる。」
「それでこそ、降谷さんです。」