第71章 懸命
「そこの眼鏡の男と妊婦も早くこっちに来て座れ!」
私達は大人しく両手を上げながら
客達が集まる場所へと歩き、地べたに座った。
人質は銀行の職員や私と秀一くんのような客を含めて大体20人くらい。全員を1箇所に集め終わると、犯人の1人が袋を取り出した。
「今から全員のスマホを回収する。
他にも連絡の通信手段になるものは全部出せ。」
銃を向けたまま、一人一人からスマホ等を回収する犯人…
私と秀一くんも大人しくスマホを袋の中にいれた。
私達の前から犯人がいなくなった後、
秀一くんが私にこっそり耳打ちしてきた。
「降谷くんに連絡は?」
『さっきした。でもたぶん
ワンコールくらいしか掛けれていないと思う。』
「ふっ…十分だ。」
実はスマホを回収される前に
ポケットに入れていたスマホをこっそり操作して、
零くんに着信だけ残すことには成功した。
…零くん……
私は今こんなお腹だから何も出来ないし…
早く助けに来てね…?
側に秀一くんがいてくれるのは心強いんだけど…
きっとこの犯人達は…
『っ…!!…うそ……』
「美緒…?どうした?」
『あ、はは…流石あの人の子…
事件に巻き込まれたのが分かって出てきたがってる…』
「!!おい…それはまさか…」
『う、ん……陣痛…きたみたい…っ、いったぁ…』
なんでこのタイミングで…!?
まだ予定日まで3週間もあるのに!
秀一くんは私の身体を心配して
犯人達に私だけ外に出してくれるように頼んでくれたけど
お願いしたところで聞いてもらえるはずも無く…
秀一くんはこっそり舌打ちをしていた。
そんな時、私の隣に座っていた60代くらいの女性が私に声を掛けてきた。