第71章 懸命
マンション近くのバス停からバスに乗車し
銀行近くの停留所で降りた。
銀行に入ってからATMの列に並び、順番が来てからお金をおろし帰ろうとした所、後ろから誰かに肩を叩かれたので振り返った。
『え…昴さん…?』
「こんにちは、美緒さん。
こんな所で会うなんて奇遇ですね。」
振り返った先には昴さんに変装した秀一くんが立っていて
久しぶりに会った彼は元気そうで安心した。
秀一くんも組織が活動休止していることは知っていて
アメリカに帰国するのかと思ったが
やる事があるからと日本に滞在したままだった。
「だいぶお腹大きくなりましたね。」
『あと3週間で予定日だからね。
今日は散歩がてらお金下ろしに来たの。』
「じゃあ帰りは僕が送りましょう。
心配性なあなたの旦那さんには内緒でね。」
…いやいや。
送ってもらったことがもし零くんにバレたらめんどくさいんだけど…。
断ろうと思って口を開きかけたら
複数の男達がぞろぞろと銀行の入り口から入ってきて
その人達の手には拳銃やショットガンが握られていた。
驚きながらその男達を見ていると
1人の男が天井へ銃を向けて弾丸を一発放ち、銀行内には大きな銃声が響き渡った。
「全員その場から動くな!!動いたら容赦なく撃ち殺すぞ!」
…まさかの銀行強盗に遭遇してしまった私と秀一くん。
銀行員の人が警報装置を押してくれたかどうか確認しようと思って窓口に目を向けたけど…
どうやら銀行強盗は裏口からも侵入していたようで
銀行員の人達は全員席から立ち上がり両手を上げさせられていて、たぶん警報装置を押すことは叶わなかったんだと悟った。
「美緒…俺の後ろに隠れろ。」
秀一くんは私を守るように背後に隠してくれたが、
銀行強盗達は店内にいる客達に銃を向け、一箇所に集め出した。
そして出入り口をシャッターで閉めるように
銀行員の人に指示を出していた。
『犯人は5人か…
銃も本物だし、迂闊に動けないね…。』
「ああ。だが外にいた通行人が銃声を聞いて
警察には通報しているはずだ。今は犯人達の言うことに大人しく従おう。」
『うん…わかった。』
話し終えるのと同時に
銃を持った強盗犯が私達の元へと近づいて来た。