第71章 懸命
安定期が過ぎていつの間にか妊娠37週。
出産予定日まであと3週間だ。
すでに産休に入っている私は
いつ陣痛が来てもいいように
入院する時に必要な着替えやベビー用品の準備などをして
毎日ワクワクした気持ちで過ごしていた。
お腹がかなり大きくなったので自分でやれないことが増えてきて大変だけど、その分零くんが私の代わりに動いてくれるから困ることなんて全くなかった。
ずっと家にいるのも退屈でストレスが溜まるから
最近は毎日ウォーキングをしている。
歩いた方が運動不足解消にもなるし、お産に向けての体力作りも兼ねているから、零くんも渋々だけど納得してくれた。
ただ出歩く時は
絶対GPSを持ち歩くことを約束させられているし
遠くまで行くのはダメだと何度も何度も言ってくるから
かなりの過保護っぷりでいつも大変な思いをしてる。
でも…零くんが心配してくれるのは嬉しいから
私はちゃんと彼の言う事を聞いているんだけどね。
『んー…今日はどこに散歩に行こうかな。』
零くんは今日も仕事で朝早くから家を出て行き
私はマンションの部屋で1人、ごはんを食べながら今日の予定を考えていた。
『あ……そういえばお金おろさないといけないんだった。とりあえず銀行行かないと。』
身支度を整えてヒールのないパンプスを履き、
リュックを背負ってマンションを出た。