第70章 報告
…なんでも分かっちゃうんだな……。
本当に零くんはすごい人だよ。
『私…零くんの負担になりたくないの…
悪阻が治って、この子を産んで落ち着くまで…離れて暮らしたい。』
本当は離れたくなんかない。
でもお腹の子と零くんを守る為には離れて暮らした方がいいと思った。
零くんはきっと
私とお腹の子の為なら平気で自分の命さえ犠牲にしようとするはずだ。
でもそんなの…私は望んでないし
零くんがいなくなるなんて絶対に耐えられない。
「美緒…
たとえ短期間でも僕の側を離れるのは許さないよ。」
『え……』
思ってもみなかった返事に驚いて
パッと振り向くと零くんは優しい笑顔を私に向けていた。
「お前が頑固なのは知ってるけど、これだけは譲れない。
僕の為を思うならここにいてくれ。」
『でも…もし私が組織に狙われたら…?』
今までなら自分の力で戦うこともできたけど
今はもう私1人の身体じゃないから…
走ることさえ控えなきゃいけないんだよ…?
「そのことなら心配ない。
僕が3日間帰る事が出来なかったのは、組織の集会で県外に行ってたからなんだ。しばらく活動を休止することになった。」
『え…!?しばらくって…どれくらい?』
「少なくとも1年は何も行動するなと命じられた。
詳しくは聞かされていないが、組織の上の人間に何かあったんじゃないかって噂だ。」
じゃあ…1年間は狙われる心配はないってこと…?
いや、でも絶対狙われないわけじゃないし…。
「僕はもう美緒がいないとだめなんだよ。
お前が3ヶ月間眠ってた時だって寂しくてどうにかなりそうだったんだ。それなのにまた離れようとするなんて…僕を殺す気か?」
殺っ!?それはちょっと言い過ぎなんじゃ…