第70章 報告
『っ、…産んでも…いいの?』
「当たり前だろ。
僕と美緒の子供が出来たなんて…すごく嬉しいよ。」
彼の声のトーンからして本当に喜んでくれているようだった…
産んでもいいって零くんが即答してくれたことが嬉しくて
私は抱き締められたまま静かに涙を流した。
『私ね…?
妊娠したって分かった時すごく不安だったの…
零くんに喜んでもらえなかったらどうしようとか
零くんの仕事の負担になったら嫌だなとか……
私なんかが…本当に母親になれるのかなって…』
涙ながらにそう伝えると、
零くんは私から身を離して指で涙を優しく拭ってくれた。
「初めての体験なんだから不安になるのは当たり前だ。
でもお前は1人じゃない…僕がいるだろ?
体調が辛いのは代わってやれないけど…
美緒のことは僕が支えてやる。仕事なんてどうにでもなる。
だから美緒はお腹の子を守る事だけ考えていればいい。
お前は絶対いい母親になれるよ。僕が保証する。」
……零くんはいつも私が欲しい言葉をくれるなぁ。
単純だと思われるかもしれないが
零くんにそう言われると不安だった事がすべて消し飛んだようだった。
やはり彼は私にとって1番効き目がある精神安定剤みたいだ。
『ありがとう、零くん…わたし頑張るね!』
笑顔でそう伝えると
零くんはフッと笑った後、私の頬に手を添えた。
「それにしてもひどい顔色だな…
会えない間に少し痩せただろ。」
『うん……毎日炭酸水とゼリーしか食べれなくて……
夜もなかなか眠れなかったから…』
「…本当にごめんな……
3日間も家に帰らなかった自分を殴ってやりたいよ。」
仕事だったんだから仕方ないのに…
零くんは昔からずっと自分に厳しいからね…。
『じゃあこれからは出来るだけ一緒に寝て?
零くんと一緒だと眠れる気がするの。』
「…分かった。
そんな可愛いお願いは聞かない訳にはいかないからな。」
しばらく零くんと話していると点滴が終わり
2人で一緒に病院を出てスーパーに寄ってから家に帰ってきた。