第66章 長野
『んー!!こっちも美味しいです!』
「あはは、機嫌が治ったようで良かったです。」
…やっぱり美味しいものって偉大だ。
さっきまでは悔しい思いをして気分が沈んでたけど
我ながら単純だと思うがすっかり元気を取り戻した私だった。
コ「あのさ…仲がいいのは結構だけど
そういうのは2人きりの時にしたら?」
『!!』
しまった…
つい、いつものように
零くんから"あーん"ってやってもらっちゃってた…
小「では美緒さん、
私のステーキ丼も一口いかがですか?」
『え!?えーっと……』
毛利さんにお箸でお肉を差し出されたので
零くんの方をチラリと見て助け舟を求めた。
「…それより毛利先生、
そろそろ教えてくれませんか?依頼の内容を。」
「ん?あぁ…そういやまだ話してなかったな。」
上手いこと話を逸らすことに成功した零くんに
心の中でお礼を言っていると
毛利さんは依頼人から届いた手紙と一緒に同封されていた紙を上着の内ポケットから取り出した。
『これって…』
「何かの暗号のようですね。」
その紙には6×6マスの36文字が正方形の形をして
それぞれのマスにカナ文字が埋まっているものだった。
『手紙には何と書いてあったんですか?』
「送り主の名前は日原 泰生。
その人の古い友人が長野の山奥の潰れた教会で
首を吊って亡くなったらしいんだが…
その理由が分からないんだそうだ。」
毛利さんの話によると
この暗号はその遺体の足元に置いてあったらしく
これを読み解けば自殺した理由が分かるんじゃないかと
暗号の解読の依頼をされたそうだ。
『自殺ではなく、殺人の可能性もあるのでは?』
小「依頼人もそう思ってて
現場は自殺した時のままになってるようですよ。」
コ「…ねぇ、小五郎のおじさんは
その依頼人とは会ってないんだよね?」
小「あぁ…何度かメールと手紙のやり取りをしただけだ。」
…じゃあその依頼人である日原さんっていう人の人相も
亡くなった人の名前も今の段階では分からないんだ…。