第64章 幸福
喫茶店の席について注文を済ませたところで
先にエリスさんが口を開いた。
「もしかしてあなた…美緒の彼氏?」
「ええ、そうです。
美緒からあなたのお話しはよく聞いています。」
「やっぱりー!
美緒もすごく可愛いけど
あなたも彼女に負けないくらいのなかなかのイケメンね?」
「あはは。お世辞でも嬉しいです。」
「お似合いのカップルだわ〜。
それで?私にお願いってなにー?」
僕は彼女に美緒と結婚式を挙げる予定があると話し
当日、美緒のメイクとヘアセットをやってくれないかというお願いをした。
きっと美緒も知らない人に顔や髪を弄られるより
友人であるエリスさんの方が嬉しいはずだから。
「…お願いできますか?」
「もっちろん!!
その日ならお店定休日だし、喜んで引き受ける!」
「Merci d'avance.
(ありがとう、よろしくお願いします。)」
「え…あなたもフランス語喋れるの!?」
僕も、ってことはきっと美緒も話せるんだな…。
あいつはこの前の事件の時、ロシア語も聞き取れていたし
一体何ヶ国語の言葉を話せるんだ…?
美緒と知り合ってからそこそこ経つが
まだあいつの知らないところがあるみたいだな。
「僕は仕事で少し学んだだけですよ?」
「さすが!美緒が選んだ男なだけあるわね!
あの子のこと、幸せにしてあげてね?」
「ええ。必ず。」
話を終えた僕達は喫茶店を出て
エリスさんを美容院まで送る途中
すでに美緒と入籍した事や、僕の本名も名乗り警察官であることも話した。
それを聞いた彼女は…
「うちの親もよく偽名使ってたなー。
あ、うちの両親ね?フランスの諜報機関に勤めてたの!
そういう感じの秘密には慣れてるから心配しないで!
あなたの事を見かけた時は安室さんって呼ぶよ!
あ!だからフランス語も話せるくらい頭いいのね!
なるほどなるほど!」
……さすが美緒の友人。
理解が早くて助かった。