第63章 復帰
再びバスに乗って、今度は両親の墓がある墓地を訪れた。
『…あれ?』
両親の墓の近くにたどり着くと
帽子とサングラスをかけた男性が
墓の前にしゃがみ込んで手を合わせていた。
………なんで零くんがここにいるんだろう。
帽子の隙間から少しだけ彼の金髪が見えて
サングラスをしているけど、あの顔立ちは間違いなく零くんだ。
少しずつ墓の方に向かって歩くと
零くんもわたしに気づいて立ち上がりこちらに向かって歩いてきた。
わざわざ変装して来てくれたんだから
声はかけない方がいいと思って視線は合わさずに横を通り過ぎた。
そしてすれ違いざまに
「ベンチで待ってる。」と私に伝えてきた。
返事はせず、振り向かないように気をつけて
両親の墓の前にやって来た。
零くんが持ってきたであろう花と、私が持って来た花を一緒にお墓の花立に入れ、前田さんの時と同じように手を合わせて心の中で語りかけた。
事件で心配をかけたことを謝ったり
これからも2人で仲良くね、と伝えた。
もちろん、零くんと結婚することも忘れずに…
『父さん、母さん。
私の結婚する人ってね…すごくかっこいいの。
優しくて、真面目で、強くて、責任感があって…
料理もできる人なんだよ?
でも私と同じで、すぐ無茶なことするから放っておけないの。
だから…彼を守れるようにこれからも頑張る。
父さんと母さんみたいにいつまでも仲の良い夫婦になれるといいな。』
そして最後に
『さっきお参りしてくれたあの人が私の大事な人だよ!』
と、心の中で呟いてから立ち上がり
零くんが待っているベンチに向かった。