第63章 復帰
私は事務所を出てから花屋に寄ってお供え用の花を二つ買った。
今日は車がなかったのでバスを使い、
まずは前田さんの墓がある墓地を訪れた。
お墓の前にたどり着くと、綺麗な花がお供えされていて
花と一緒に前田さんの好きだった缶ビールも置かれていた。
私と同じようにお墓が元に戻った知らせを聞いて
誰か来てくれたのかな?
でも…懐かしいな、このビール。
以前前田さんと飲みに行った時
いつもこのビールを飲んでいたな…と昔の事を思い出した。
私も同じビールを1缶コンビニで買ってきていたから
カバンから取り出して、すでに置かれていた缶の隣に置いた。
……前田さん。
約束通り、前田さんの好きなお酒持ってきましたよ!
でもあまり飲みすぎないで下さいね?
あなたはあまりお酒に強くなかったんですから。
この前の事件の時、心配かけてごめんなさい。
もう二度と……自分を犠牲にしようなんてしません。
同期のみんなにもすごく叱られました。
あ、そういえば警護課のみんなも元気ですよ?
私が入院していた時、お見舞い品を持ってきてくれたみたいで
そのお礼を伝えに行って少しだけ話しました。
みんなも前田さんの意志を継いで
しっかり職務に励んでいるそうです。
私だけじゃなくて…彼らの事も見守ってあげて下さいね。
目を瞑り手を合わせながらたくさんの報告をした。
ここに来る時は
いつも泣くのを堪えながらお参りしていたけど…
今日は全然悲しくなんてなかった。
仇である富士崎を捕まえることができたし
夢で前田さんに会えたからかな?
最後に1番大事な報告をするために
目を開けて前田さんの墓石と向き合った。
『前田さん、私……結婚することになりました。
私には勿体無いくらい優しい人です…今度紹介しますね。』
伝え終わってから出口に向かって歩き出したところで
そよ風が少し靡いて…
まるで前田さんが私に返事をしてくれたように感じた。