第63章 復帰
「悪い、先に出る。」
『気をつけてね。行ってらっしゃい。』
「……いいな、それ。」
『それって…どれ?』
よく分からなくて首を傾げていると
零くんは顔を近づけてきた。
「行ってらっしゃいってやつ。…新婚みたいだ。」
『…っ、もうっ!!何言ってんの!?
早く行かないと遅れるよ!』
恥ずかしくて零くんの胸を押したがびくともせず…
彼は私の腕を掴み引き寄せて口にチュッとキスを落とした。
「行ってきます。」
『……いってらっしゃい…。』
「ふっ、顔真っ赤。…じゃあな。」
ぽんぽんと私の頭を撫でた後、零くんは仕事に向かった。
一緒に暮らすようになってから
毎朝こんな甘々なことをするかもと想像するだけで
ドキドキして心拍が早くなる……
零くんと暮らし始めたら私死んじゃうんじゃないかな…
これからの日々を妄想しながら朝ごはんを食べて
私も仕事に向かった。
今日は丸1日ボディーガードの仕事が入ってたから
私は気合を入れてからアパートを出た。
…しかし、予定では1日外出予定だったクライアントが
午後からの予定は急遽変更になってしまい
ボティガードの仕事は午前中だけで終了し
午後は事務所に戻ることになった。
『梢さん、何かお手伝い出来ることありますか?』
「ううん。特にないから大丈夫よ。
手が空いてるなら社長に聞いてきたら?」
そう言われて社長室に向かって東社長に仕事がないか聞いてみたけど
特に何も手伝うことは無いと言われてしまった。
東「若山、暇なら墓参りでも行ってきたらどうだ?
お前の上司だった人と両親の墓、
もう綺麗に治してもらったんだろ?」
『あ…はい。でもいいんですか?』
前田さんと両親のお墓は、あの事件の時
犯人の富士崎に汚されてしまったけど
先日、お墓の修復が終わったと墓地の管理人に連絡をもらっていた。
東「お前、怪我治ってからずっと働き詰めだろ。
息抜きがてら今から行ってこい。」
『そうですか?
じゃあお言葉に甘えて…行ってきます!』
東「おー、のんびりしてきて良いぞー。」
いや、のんびりはダメでしょ社長…
どうやら今の社長はやる気スイッチオフの状態のようだ。