第62章 約束
「萩原と瑞希もまたな。」
ゼロはそう言って二人の子供の頭軽く撫でてから
病室を出て行った。
萩「そういえば降谷ちゃんってさ、
まだ俺らの子抱っこしてないよね?」
瑞「後で美緒に文句言われたくないから
美緒の後で抱くって聞かないの。
あいつ本当美緒にベタ惚れだよね。」
そんなのずっと前からそうだろ。
あいつの世界の中心は恐らく美緒だろうなって思わされるくらい
ゼロは美緒にゾッコンだ。
それなのに……
未だ目を覚さない美緒を目の前にして
ゼロは一体どんな気持ちでいるんだろうか…。
辛い、なんて言葉一つでは言い表せないくらい
しんどい思いをしているはずだ。
なのにあいつはそんな素振りは俺達に全く見せないから
それが逆に心配になる。
もし俺がゼロの立場だったら
きっと仕事なんか手につかず
ただひたすら悲しみに明け暮れるだろう。
マジでゼロは強ぇよな…。
でも美緒…
お前がずっと寝たままだと、あいつもいつか潰れちまうぞ…。
そうなる前に早く起きろ。
俺達みんな……早くお前の笑顔が見てぇんだよ。
「おい美緒、いつまでも寝てると体鈍っちまうぞ。」
萩「そうだよ美緒ちゃん。
ボディーガードの仕事、早く戻らないと。」
瑞「美緒…あんたに話したい事沢山あるんだよ?
ちゃんと全部聞いてもらうからね!」
俺達は見舞いに来た時はいつも
眠っている美緒に色んなことを話かけている。
美緒からの返事はないが、ずっと声をかけていれば
そのうちフッと起きていつもみたいに反応してくれるんじゃないかって思うから…。
一方的に話し終わり、
帰る時にはみんなで美緒にまた来るな…と挨拶をして病室を出る。
この3ヶ月間、同じことをずっと続けているが
今日も美緒からの返事はなかった。
…俺達は寂しい気持ちのまま病室を出た。