第61章 擁護
「ちょっと!まだ動いたらダメですよ!
病室に戻って下さい!!」
声がする方へ視線を向けると
包帯を身体中に巻かれたヒロが片足を引き摺りながら僕達の元へやって来た。
「ヒロ……」
伊「っ、お前…!そんな身体で何やってんだ!」
諸「はぁ……俺なら大丈夫だ…。」
「何言ってるんですか!!
貴方も酷い怪我なんですから安静にしてて下さい!」
諸「っ、平気です!
大事な友人が危険な状態なのに
のんびり寝てなんかいられないんだ!!」
ヒロは看護師にそう怒鳴ると体勢を崩して転倒しそうになり
僕は咄嗟にヒロの腕を掴んだ。
諸「っ……ゼロ…。」
「そんな無理して動いてたら傷に障るぞ。」
僕はヒロを椅子に座らせて
後で必ず病室に連れて行くからヒロをこのままここにいさせてあげてほしいと看護師にお願いすると渋々了承してくれた。
諸「ゼロ…ごめん…
俺のせいで美緒ちゃんが……」
「ヒロ…謝らないでくれ。
そんな風に謝罪されると……
美緒はもう助からないんじゃないかって思えてくるんだ。」
美緒は今こうしている間にも
生きようと頑張っているはずだ…。
謝られると美緒の死を覚悟しないといけないみたいで…
上手く息ができなくなって苦しくなるんだよ。
松「なぁ、諸伏…
美緒に何があったのか教えてくれねぇか?
なんであいつ…自分で腹刺したりしたんだよ…。」
諸「……あの時……富士崎の父親は……
美緒ちゃんに俺を刺すように言ったんだ。」
「!!」
伊「っ、なんだよそれ!」
諸「もちろん美緒ちゃんは拒否した。
でも奴らは…ゼロの正体にも気付いていて
俺を殺せば恋人であるゼロや
美緒ちゃんの周りの人達には手を出さないって言ってたんだ。」
瑞「そんな……ひどい……!」
萩「あいつら…最低だな。」
諸「ここまで言えばみんなも分かったと思うけど…
美緒ちゃんは俺たちを守るために
自分の命を犠牲にしようとして……っ…
…自分自身を刺したんだ……。」
美緒……お前は本当に馬鹿だな。
そんな風に守ってもらっても……
誰も嬉しくなんかないんだよ。