第61章 擁護
『ひどい……!!
どうしてこんな事をしたの!?』
諸伏くんの元に近づこうとすると
また1人…スーツを着た男が柱の陰から現れた。
「動くな。動いたらこの男を殺す。」
『っ、富士崎 士郎!親子揃って最低ね…!』
「フン、この男のせいで私は政界から追われた。
その礼をしてやっただけだ。」
諸「うっ…」
父親の士郎は諸伏くんの髪を掴んで上を向かせていた。
『やめて!乱暴にしないでよ!』
諸「っ…美緒、ちゃん…?
ごめん、ね……ちょっとミスっちゃった…。」
力ない笑顔でそう言った諸伏くんは
無理をしてるのが伝わって来て思わず泣きそうになった。
「この男
ずっと1人で逃げ回るから捕まえるのに苦労したんだぜ?
捕まえたのは昨日だし。」
『昨日…?』
「何回か追い詰めたんだけどその度に逃げられたからな。
スマホ落としてくれたのはラッキーだったよ。」
何がラッキーだ…!!
諸伏くんになりすましてメールを送ってきたせいで
風見さんが撃たれたと思うと私はハラワタが煮え繰り返る思いだった。
「でもこいつ、
迷惑かけないように誰にも連絡取ってなかったみたいだし?
本当に馬鹿な男だよなー」
『そんなことより…早く諸伏くんを解放して!
約束通り1人で来たんだから!!』
「だってよ。親父、どうする?」
「お前が勝手に約束したんだろ?俺は知らん。」
諸「…うっ……げほっ…げほっ…!」
富士崎の父親は抵抗できない諸伏くんのお腹に
思い切り蹴りを入れていた。
『お願い!もうやめて!!』
「動くなっつってんだろうが。」
『っ…!』
息子の蓮也は背後から私の肩を鉄の棒で殴って来て
急に殴られたことにより私は地面に片膝をついた。
「くくくっ。そうそう。
君のその顔が見たかったんだよ!!
苦痛に歪んだ君の顔を!!」
『…何を…言ってるの…。』
意味が分からなかった。
肩を殴られた痛みに顔を歪めている私の顔を覗き込み
とても嬉しそうな顔をしてニヤついている蓮也は
まるで前田さんを殺した時の表情に似ていて冷や汗が流れた。