第60章 陥穽
本当は零くんに知らせたいところだけど…
私の様子をすでにどこからか見てると言っていたし…
怪しい動きをしたら、諸伏くんが殺されるかもしれない…
新宿の街は人が多すぎて
いくら人の視線に敏感な私でも、こんな人混みの中
視線を感知するなんて出来ない…。
明らかに罠だって分かってるけど
結局、富士崎の言う通りにするしか諸伏くんを助ける方法は思い浮かばなかった。
ごめんね、零くん…
諸伏くんは絶対私が助けるから…
いつも無茶ばかりして本当にごめん…
零くんにもらったネックレスをギュッと握りしめてから
車のそばにスマホを捨てた。
きっと零くんなら…
私のスマホを拾ってすぐに来てくれるはずだよね…?
わずかな望みを信じて、私は指定されたビルに向かった。