第60章 陥穽
「直接やり取りしてたのはリーダーだから
俺達は本当に何にも知らねぇ。だが……金を受け取った場所だけ電話で話してるのを聞いた。……新宿だ。」
『…ありがとう。
手荒な真似してごめんなさい。』
掴んでいた男の腕をゆっくり離して
私は出口に向かって歩き出した。
「おい…!あの女放っておいていいのかよ…!」
「先に手出したのはお前だろ。俺達は今、あんな女に構ってる暇はねぇ。放っておけ。」
…話の分かる人たちで良かった。
大人数で殴り掛かられたらどうしようかと思ったよ。
私は再び車に乗り込んで新宿に向かって車を走らせた。
ーーー…
新宿に来たはいいけど、詳しい場所までは分からないので
私は適当に車を走らせていた。
新宿の街は夜にも関わらず人が多いし
ネオンがキラキラと光っていてとても明るい。
『さて…どこから探そうかな…。』
やっぱり人目につきにくい廃ビルとか
倉庫とかが無難だろうか。
こうしてる間にも諸伏くんが危険な目に合っているかもしれない…
そう考えるとじっとしていられなくて
私は車を近くのコインパーキングに止め、歩いて探す事にした。
しかし、
車を降りたところで私のスマホが鳴り
画面を見ると非通知と表示されていた。
『…もしもし。』
「……くくっ、久しぶりだな元SPさん?」
『…っ!!…富士崎 蓮也ね。』
「ふーん。俺のこと覚えてくれてたんだ?」
『忘れるわけ無いでしょ。あんたみたいな最低な男。』
「相変わらず気が強いねぇ。たまんねぇよ。」
…っ、気持ち悪い…。
SPだった時にも何度鳥肌が立ったか分からないその男の声は
電話越しに聞いてても吐き気がする。
『諸伏くんはどこなの!?』
「んー、教えてあげてもいいけどー…1人で来いよ?
1人で来なかったら、君のお友達殺すから。」
『…分かった。場所は?』
「新宿〇〇ビルだ。スマホとかGPSは持って来んなよ?
もし隠し持ってるの見つけたら
すぐお友達をあの世行きにしてやるからな。
君の事はもうすでに見張らせてるから逃げるのも無理だよー?」
富士崎はそう言うとすぐに電話を切った。