第60章 陥穽
ずっと唇を重ねていたから
身体中が零くんでいっぱいになったような感覚になり、
半酸欠状態になった私は
唇が離されると同時に、零くんの肩にポスっともたれかかった。
『はぁ……もう…零くんキスし過ぎだよ。』
「まだ足りないくらいだ。」
いや、もう無理です。
体に力が入りません!
『でも…零くん仕事戻らなくていいの?』
「……分かってる。」
わかってるにも関わらず、
肩にもたれているままの私を離そうしないのはなぜ…。
言ってる事とやっている事が真逆の零くんが可愛くて、笑みが溢れた。
『ねぇ……今回の事件が解決したら
零くんとまたデートしたいな。』
「いいな。今度はどこに行きたい?」
『!!江ノ島!!
前行けなかったところ散策したい!!』
「またそんな近場でいいのか?
美緒は本当に欲がないな。」
『だって…この前行った時すごく楽しかったから…』
「分かったよ。絶対連れて行ってやるから。」
『本当…?約束だからね!』
「ああ、約束だ。」
私達は顔を見合わせて最後にもう一度だけキスをした。
そのキスは指切りの代わりのような、
ただ唇を重ねるだけのとても優しいキスだった。