第60章 陥穽
「犯人の狙いが若山さんと我々公安である以上
ちゃんと話すべきだと思います。もう隠しきれませんよ。」
「……そうだな。」
話す覚悟を決めた瞬間
僕のスマホが振動し確認すると、コナンくんからメールが届いたようだ。
【松田刑事が狙撃されて○○病院に運ばれたよ。
命に別状はないみたい。
犯人は美緒さんが捕まえてくれて
今一緒に病院に向かってる。】
…あいつ…絶対また何か無茶なことしたな。
「風見、傷が癒えるまで大人しくしていろよ。」
「分かってます。降谷さんもお気をつけて。」
風見のお陰で迷いは消えた。
美緒に会って正直に全て話して謝ろう…。
僕は急いで病室を出てコナン君から教えてもらった病院に向かった。
ーーーー…
松田の病室に入ると
僕に背を向けたままベットのそばに立っている美緒の背中が見えた。
顔は見えなかったが
立ったまま松田の寝顔を見下ろしている彼女の背中を見ただけで
明らかに元気がなく、悲しんでいることが伝わってきた。
「……美緒。」
声をかけてパッと振り向いた美緒の顔は
とても疲れ切っていて隈がひどい。
しかも右手の甲がボロボロだ…
美緒と目を合わせようとしても
彼女は気まずそうにしていて僕の方を見ようとしなかった。
…美緒と目が合わないだけで
こんなにもどかしい気持ちになるとは思わなかったな…。
病室にいたみんなに断りを入れて美緒の腕を掴み病室の外に連れ出して
人目につかない非常階段の踊り場までやってきた。
美緒はまだ僕の方を見ようとせずに俯いていたが
この間の事を謝罪すると、漸く僕の目を見てくれた。
美緒の目に僕が映ったのが嬉しくて…
たったそれだけのことなのに愛しさがグッと込み上げてきた。
そして
少しの間美緒とくっついた後、
一緒に階段に座り事件のことを詳しく話すことにした。