第60章 陥穽
side 降谷
風見が撃たれたあの日………
病院にやって来た美緒に協力者をやめろと言ってしまい
僕は激しく後悔した。
あいつを巻き込みたくないからって言い過ぎた…
僕の頬を叩いた時の美緒の悲しそうな顔が頭から離れない。
あんな顔をさせたかった訳じゃない…
ただ美緒を守りたくて、事件に関わって欲しくなかっただけなのに…
やはり美緒のことになると冷静ではいられなくなる僕はまだまだ未熟だな。
風見が撃たれた日から毎日警察病院に足を運んでいるが
彼の意識はまだ戻らない。
「…なぁ、風見。
僕はどうしたらいいんだろうな。」
眠っている風見に話しかけるがもちろん返事は返ってこない。
そんな時、僅かだが風見の手がピクッと動いた。
「ふる、や…さん…?」
「!!良かった…やっと目を覚ましたのか…。」
ホッと安心して、目が覚めた事を医者に伝えた後診察が行われ
しばらく入院するとのことだったが、もう心配はないそうだ。
「風見…悪かったな。
僕を庇ったせいでお前をこんな目に合わせた。」
「何言ってるんですか!
私はあなたを守れた事を誇りに思います。
それに……若山さんと約束していましたからね。」
そういえばそうだったな…。
風見の口から美緒の名前が出た途端
再びやってきた後悔の念。
風見はそんな僕の表情を見逃さなかった。
「降谷さん、若山さんと何かあったんですか?」
さすが僕の部下なだけあって鋭くなってきたな…
誤魔化そうとも思ったが、
僕は素直に美緒との間にあった出来事を話した。
「それは…若山さんが怒って当然です。」
「だよな。反省してる…。」
「このままでいいんですか?
あの人のことだからきっとまた無茶しますよ。」
風見の言うことが正論すぎて言い返せなかった。
美緒は一度言い出したら絶対聞かない頑固者だってことは、ずっと前から分かっていたことじゃないか…。
なのに僕はあいつに何も話さず事件に関わるなとだけしか伝えていない。
美緒が怒るのも無理ないよな。