第59章 狙撃
犯人の男は私の顔を見てかなり驚いていた。
「くっそ……!テメェだったのか!」
『私の大事な友人を傷つけたあなたを逃すわけないでしょ。
お礼はたっぷりとさせてもらうから!』
「!!…ぅっ…」
私は男の元に近づき、胸倉をつかんで思い切り顔を殴った。
「やめ、ろ…!俺は金で雇われてやっただけなんだよ!
ゆっ、ゆるしてくれ!」
『……許さない…許せるわけがない!』
「ひっ!」
その男の顔を見たら
肩から血を流して顔色が青白くなった松田くんを思い出し、私は無我夢中で男を何発も殴っていた。
「美緒さん!それ以上はダメだよ!」
『止めないでコナン君!
この男…っ、殺してやらないと気が済まない!』
私の手はすでにぼろぼろで、皮がめくれ血が滲んでいたが
そんな痛みなんか気にならないくらい
私は冷静じゃなかった。
ひたすら殴り続けていると、急に後ろから羽交い締めにされた。
「美緒!もうやめろ!!」
『っ、離してよ!!
松田くんと同じ痛みを味わわせてやるんだから!』
いつの間にかここに駆けつけていた秀一くんに止められて
犯人から離されてしまった。
「落ち着け!こんな男…殴る価値ないだろ!」
『落ち着けないよ!!
だって…私のせいで松田くんが…!』
…松田くんだけじゃない。
伊達くんも、東社長も、風見さんも…
私のせいでみんなが傷つけられたんだ。
諸伏くんだって酷い目にあっているかもしれないのに…
落ち着くなんて無理だよ…!
「美緒さん!しっかりしてよ!
松田刑事はちゃんと生きてるでしょ!?
今の美緒さんのそんな姿見て松田刑事が喜ぶと思う!?」
『っ……』
コナン君の言葉でハッとした私は
力んでいた力が抜けて足元からガクッと崩れ落ち地面に座り込んだ。
「ボウヤの言う通りだ。
降谷くんも……お前のそんな姿は見たくないと思うぞ。」
秀一くんが私と目線を合わせて彼の名前を口にした瞬間、
悲しそうに私を見つめる零くんの顔が浮かんできて
私の目から涙が溢れ出した。
『…っ、2人とも…
ごめ…ん……わたしっ…』
「大丈夫だ。お前は何も悪くない。」
私が口元を抑えて嗚咽していると、
秀一くんは私のことを優しく抱き締めた。