第57章 出張
『…じゃあ聞くけど
なんで貴方のバスタオル、あんなに濡れていたの?』
「…っ、え…………。」
『公共の温泉にはタオルを入れないのがマナーでしょ?
あなたのタオルだけ異様に濡れてた。脱衣所にいる時もずっとポタポタ水が垂れていたし。』
「それ、は……」
『言えないなら私が言ってあげる。
被害者を石で殴った時、返り血が飛んじゃったからシャワーで洗い流したんでしょ?』
犯人の女はかなり驚いた顔をしていたので
どうやら図星のようだった。
『まぁ、凶器の石が見つかった時点で貴方の負けですよ。
きっと貴方の指紋がたくさん付いているだろうし。』
それに例え洗い流したとしても、
バスタオルからはルミノール反応も出るはすだ。
諸「若山さんの言う通りです。
先ほど鑑識から指紋が検出されたと報告を受けました。
…罪を認めますか?」
諸伏警部がそう尋ねると
犯人の女性は膝から崩れ落ちて泣き喚いていた。
動機は、付き合っていた男を被害者に寝取られ
嫉妬が殺意に変わってしまったらしい。
…どうしてそんな理由で人を殺めようとするのだろうか。
理解に苦しむ。
犯人の女性は手錠をかけられてゆっくり立ちあがり
刑事さんと一緒に歩き出した。
『…ちょっと待って下さい。』
犯人の女性にはまだやらなければならないことが残ってるので
私はその女を引き止めた。
『梢さんに…謝って下さい。』
梢「…美緒ちゃん。
わたしは気にしてないから大丈夫よ。」
『っ、全然大丈夫じゃありません!!
関係のない梢さんを疑っておいて
謝罪もしないないて……私は絶対許さないから。』
犯人の女を睨んでいると、その女はため息をつき
こちらに向き直った。
「どうも、すみませんでした。…これで満足?」
その女は全く悪いと思ってない声のトーンで謝罪の言葉を述べ
そのまま立ち去って行った。