第57章 出張
『一緒のお風呂って言ってもここのお風呂はすごく広いですし…
湯気で視界も悪かったので顔までハッキリとは見えませんでした。
お湯の流れる音も響いていましたから、足音すら聞こえない状況で誰がいつどこのお風呂に移動したかなんて分からないです。』
諸「まぁ、そうでしょうね。」
『凶器は見つかりましたか?』
諸「現在捜索中ですが…
もう少ししたら見つかるかと思いますよ。」
諸伏警部は口元を緩ませていたので、
どうやら犯人の見当はついているようだった。
………やっぱりこの人優秀なんだな。
諸「これは私の勘ですが
若山さんは犯人が誰か分かってるんじゃないですか?」
『!!さぁ…どうでしょうね?』
諸「ふっ、面白い人だ。景光に聞いていた通りです。」
…。
え!?
私が驚いていると、1人の刑事さんが駆け寄って来て
諸伏警部に報告をしていた。
「諸伏警部!例のもの、見つかりました!
警部の仰る通りでしたよ。」
諸「やはりそうでしたか。」
どうやら証拠も揃ったみたいだ。
諸「凶器が見つかりました。
犯人は………
露天風呂に入っていたという貴方ですよね?」
その女性はやっていないと訴えていたが
諸伏警部は事件の真相を話し始めた。
諸「凶器は露天風呂にあった石。
あなた方は最初に4人で露天風呂に入ったんですよね?
その時に石をくすねてタオルの中にでも隠していたんでしょう。
そして殺害に使用した後、再び露天風呂に戻しに行った…
違いますか?」
「そんなの…推測でしょ!?
わたしがやったっていう証拠はないじゃない!
…そうだ…脱衣所に1人でいたこの人だって怪しいわよ!」
女性は梢さんを指差して疑いにかかっていた。
梢「はぁ…?
なんで知らない女の人を殺さなきゃならないのよ!」
「実は人見知りだったりしないんですか?」
梢「知らないわよ!ふざけないで!」
梢さんを疑って来たその女にムカついた私は
その女を睨みながら口を開いた。