第56章 美容
何を話しているのか聞こえなかったが、しばらくすると零くんは戻ってきて
顔が切り替わっているから仕事なんだなと察することができた。
「…美緒、悪い。」
『ううん、少し休んだからもう大丈夫。すぐ服着るね。』
私がベットを出て服を着ていると
零くんもワイシャツを着てネクタイを締め
スーツのジャケットを羽織っていた。
「家の近くまで送る。」
『いいの?ありがとう。』
零くんのアパートを出て私の家の近くまで車で送ってもらい
車を降りる時に一度だけキスをしてから別れた。
家に着いてから時計を見ると、時刻は深夜0時。
…こんな時間から仕事なんて、本当に大変だな…。
零くんを心の中で労いながらシャワーを浴び、
夜食に少しだけご飯を摘んでいると零くんからメールが届いた。
【しばらく仕事が忙しくなりそうで会えない。】
…残念だ。
余程大きな事件でも起きたのかな。
メール画面を見ながら心配していると、
再び零くんからメールが届いた。
【ウィッグつけた写真、明日から毎日送ってくれ。
美緒の顔見ないと仕事頑張れない。】
『ぶふっ!ゴホッ!っ、はぁ!?』
あまりにも変な内容すぎて戸惑ったわたしは
口に含んでいたお茶を吐き出し咽せてしまった。
…どうしよう、無視しようかな。
いや……そんなことしたら
きっと今日以上に酷い目に遭わされる気がする…。
色々考えた末、
やっぱり自分の身は大事なわけで……
わたしは零くんの言われた通りにしよう決めてから
ベットで眠りについた。