第56章 美容
……全身が痛い。
気がつくと同時に体に走る痛みと怠さ…。
骨抜きにされたような感覚だ。
私の隣に零くんはいなかったけど
シャワーの音が聞こえるから、きっとお風呂に入っているんだろう。
横になったままぼーっとしていると
零くんは上半身裸の下着だけ履いた状態で
髪をタオルで拭きながらわたしの元へ戻ってきた。
「起きてたのか。」
『うん。さっき起きた。』
「体、大丈夫…じゃないよな。」
『…ううん、大丈夫だよ。』
確かに今までに無いくらい激しくされたと思うけど…
零くんに愛されているって体で実感できたことの方が
何となく今日は嬉しかった。
「美緒……本当にお前を監禁してやりたい。」
『……怖いって。』
「それくらいお前が好きなんだよ。」
『でも監禁はだめ。絶対。』
「…ちっ。」
…舌打ち!?
まさか本気で監禁する気だったの…!?
疑いの目で零くんを見ていると
髪を拭き終えた彼は、ベットで横になっている私の隣に寝転がってきた。
「そういえば、明日また美容院行くとか言ってなかったか?」
『うん。頼んでるものを取りに行くの。』
「?何を頼んだんだ?」
『ウィッグだよ。雑誌に載ったせいでボディーガードの仕事やりにくくなったら困るし、しばらくの間ウィッグ被っての生活かな。」
これは葉山の提案だった。
髪型を変えれば女性の印象ってだいぶ変わるし
時間が経てば私の噂も無くなるだろうからね。
「なるほどな。
でも近くで見たら美緒だってバレるだろ。」
『その時は似てるだけだって言って誤魔化すよ。』
「そうか…。上手くやれよ?」
そう言いながら私をギュッと抱き締めてきた零くん。
お風呂上がりだから
零くんの使っている爽やかなシャンプーのいい香りがして
このままずっと抱き締められていたくなる…。
そう思っていると、零くんのスマホの着信音が聞こえてきた。
「…誰だ。」
零くんはベットから出てスマホを持ち
ダイニングの方へ向かっていった。