第56章 美容
風「降谷さん…元気出して下さい。」
「……。」
風見は僕に励ましの言葉をかけてくれたようだけど
僕の耳には入ってこなかった。
美緒の顔が映った雑誌に再び目をやると
ずっと見ていたくなるくらい可愛くて…
僕は雑誌を見ながらうっとりしていた。
こんなの世の男達が見たら全員彼女に惚れてしまうんじゃないかと
僕は本気でそう思った。
そんな時、少し離れたところで僕と同じように雑誌を見ている部下達の話し声が聞こえてきた。
「…すっごく可愛いな若山さん。」
「あぁ…俺帰りにもう一冊買う。」
「この顔はやばいよな。犯罪級の可愛さだ。」
「確かに。色気も半端ないな。」
……。
風「あ、の…降谷さん?」
僕は机をバン!と叩くと風見はビクッっと肩を震わせていたが
そんなのは無視して美緒のことを話していた部下達の元へ向かった。
「僕の彼女をそんな変な目で見るなんていい度胸してるな。」
「「「!?ふ、ふるやさん!?」」」
彼等は僕の事を怯えた目で見ていたが
同情の余地など全くない。
「二度とその雑誌を見るなよ。…分かったな?」
「「「は、はい……。」」」
「よし、
じゃあ今日は特別に僕がお前らに稽古をつけてやる。
訓練場に来い。」
「え…!?」
「いや、今日はちょっと…」
「報告書の作成が…」
明らかに嫌がっている僕の部下達。
憂さ晴らしに付き合わされると思っているんだろうな。
…その通りだ。
「僕の誘いを断るつもりか。」
「「「…いえ……お願いします…。」」」
完全なパワハラだと思うが、
美緒のことを可愛いと話す部下達に
お灸を据えてやらないと気が済まない。
「風見、お前も来い。」
風「え!?いや、私は…」
「来るよな?」
風「はい、行きます…」
有無を言わさず風見達を引き連れて訓練場に向かい、
その後は部下達全員が立ち上がれなくなるまで相手をしてやったが
僕の気分は全くと言っていいほど晴れなかった。