第56章 美容
「私も今日そのことを知ったんです…。
本当にごめんなさい!!」
『……あなたが悪いわけじゃないのは分かりましたけど…
販売停止には出来ないんでしょうか…。』
「今、会社の上層部が相談してるところですが…
もうすでにだいぶ売れてしまっているので手遅れかと…。
SNSはご覧になりました?」
編集者の人の話を聞いていた梢さんがスマホで調べると
その雑誌の表紙についての感想がたくさん書き込まれている画面を見せてくれた。
【こんなモデルいた!?超絶美人!】
【名前すら載ってない!どこの誰!?】
【色気半端ない!】
【こんな顔になりたい…。】
【噂では東京のどこかに住んでるみたい!】
SNSには、表紙を飾ってしまった私についてのコメントが増えていき
わたしはそれを見て、机の上に項垂れた。
『今…見ました……。』
もはや怒る気力も私には残っていなかった。
「無断で若山さんの写真を使ってしまったので
私達の会社を訴えるかどうかはお任せします。
決して引き止めはしませんので…。
本当に申し訳ございませんでした。」
そのまま電話を切り、わたしはため息をついた後
勢いよく机に突っ伏した。
葉「で、どうすんだよ。訴えるのか?」
『…そんなことしないよ……。
訴えたりしたら今よりもっと大事になるし
きっと編集長の人が解雇されちゃうじゃん。』
梢「美緒ちゃんならそう言うと思ったわ。」
葉「相変わらずお人好しだなお前。」
葉山の小言に言い返す気力すら湧いてこない私…。
SNSでたくさん顔が晒されていたし、
どうしようもなく恥ずかしくてどこかに逃げ出したい気分だ…。
東「若山が悪いわけじゃねぇけど、ちょっと目立ち過ぎたな。
しばらくボディーガードの仕事はやめとくか。」
『!!そんなぁ……。』
社長の言うことは分かるけど、
仕事が好きな私にとっては正直かなり憂鬱だ。
梢「でも確か…
明日は美緒ちゃん指名の警護依頼が一件入ってましたよね?」
東「あー…そういえばそうだったなぁ。」
社長が頭を悩ませているところに
話を聞いていた葉山が、いい考えがある!と提案してきた。
その提案は思ってたより使えそうで
わたしは久しぶりに葉山に感謝し、彼がいてよかったと思った。