第55章 決闘
自分の部屋に向かってアパートの階段を駆け上り
鍵を開けてから中に入ると玄関には見たことのある零くんの靴。
っ、やっぱり零くん来てるんだ!!
リビングに足を進めると、
零くんはソファーの背に身を預けて気持ちよさそうに眠っていた。
しかし…
『零く…………んんんん!??』
なぜか顔が傷まみれの腫れまくり。
手当ては済んでいる状態ではあったけど、一体何があったんだろう…。
とにかく冷やさなきゃ、と思った私はキッチンに向かい
冷凍庫から保冷剤を取り出してハンドタオルで巻いた。
リビングに戻り零くんの頬に保冷剤を当てると
零くんはその冷たさでパチっと目を覚ました。
『あ、起きた。ねぇ零くん、この怪我…』
「おかえり、美緒。」
『た、ただいま…。』
怪我のことを聞きたかったのに遮られて
そのまま零くんは私を腕の中に閉じ込めた。
「はぁ…2週間ぶりの美緒は癒される。」
『………あの、零くん?この傷どうしたの?』
「なんでもないよ。大したことない。」
そんなわけあるか!
すごく痛そうなんですけど!?
なんか昔もそんな感じでボロボロの時あったよね!?
確かあれは警察学校にいた時に
松田くんと殴り合いした……って………
……まさか!!
『…相手は松田くん?』
私の問いかけに、零くんは分かりやすくピクッと反応した。
…やっぱり松田くんと喧嘩しちゃったんだね……。
『私のせい……だよね。ごめんなさい…。』
零くんから離れて頭を下げると、彼は私の手を優しく握ってきた。
「それは違うよ。
僕の大事な美緒に松田が手を出したから許せなくて…
あいつはただ黙って殴られる奴じゃないからな。」
握られた手に目を向けてみると、
顔と同じように零くんの手はボロボロでかなり痛々しかった。
「そんな顔しないでくれ……松田には話をつけてきたから。」
『…私のこと、嫌になってないの?』
「そんなわけないだろ。
僕は美緒と離れる気はないって言ったじゃないか。」
『っ…。』
零くんのその言葉に安心して
私は自分から彼に思い切り抱きついた。