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《降谷夢》bonheur {R15}

第54章 厚情




『…良かった…
零くんが無事で……ほんとうに…っ…』

「……美緒…。」


零くんは少し困ったように笑いながら
私の後頭部に手を回して胸元へと引き寄せた。



「泣くなよ…僕はお前の涙に弱いんだ。」

叱りたいのに叱れない、と、ぼやく零くん。
しかし私の涙はまだ止まってくれない。



『私怒ってるんだからね!?
いくらなんでも睡眠薬飲ませるなんて酷すぎる!』

「ああ…。僕が悪かった。
もう二度としないから許してくれ。」

『本当は一発くらい殴ってやろうと思ってたけど…!
…零くんの顔見たらそんな気失せたよ。』

「…それは良かった。」


命拾いしたな、なんて言われて少しムカついたけど
零くんの温もりに包まれていたらそんな怒りなんてすぐにどっかに行ってしまった。





「お前……若山か?」


零くんの胸に顔を埋めていると、
背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。



『あなたは……村中警視正!お久しぶりです!』



村中さんは目暮警部の同期で、すでに警察を引退しているが
私が警察にいた頃の上司…前田さんとも仲が良かった人だ。


「前田が可愛がってた部下だから君の事はよく覚えてるよ。
そこにいる公安の彼は…若山の恋人か?」


『!!そう…ですけど…
なぜ彼が公安だと分かったんですか?』


「長い事刑事をやってたんだ。勘で分かるんだよ。」


さ、さすがだ…。
普通なら絶対分からないはずなのに…。

村中さんの言葉に驚いていると道路に飾られていたランタンが破裂する音が聞こえて、色のついた液体が流れ出した。


「君達は早くここを離れろ。
彼女は私が警察に引き渡しておくから。」

「…すみません、お願いします。
行くぞ、美緒。」


『え…でも……まだみんなが…』

「あいつらなら大丈夫だ。今は信じて待つしかない。」

…こんなボロボロの状態の零くんを放ってはいけないし
零くんが他の刑事さん達に公安だとバレるのもまずい。


『分かった…。肩貸すね。』
「悪いな。」


私と零くんは村中さんに頭を下げてからその場を離れ
近くにあったビルの屋上に向かった。



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