第54章 厚情
炎を目印にヘリが落ちた場所に近づいて行くと
動いている人影を見つけた。
『え……零くん…!?』
よく見るとその人物はボロボロの状態の零くんで…
…ヘリにぶら下がってたのは零くんか!
私に無茶するなとか言うくせに
自分だって危ないことしてるじゃない!
零くんの元に駆け寄ろうとすると
彼の背後に鉄槍らしき物を持った女性がいた。
明らかに零くんを狙っていたので
わたしは全力で走って2人の間に入り込み
鉄槍を待っている女性の手を掴んだ。
「!!お前は…!」
『私の零くんに…何してんのよ!!』
私は女性が武器を持っている手を掴んだまま彼女の顔に頭突きをして、
少し距離ができてから得意技である回し蹴りを喰らわし気絶させた。
『はぁ……間に合ってよかった…。』
座り込んでいる零くんの元へ駆け寄り目線を合わせると
彼はかなり驚いた顔をしていた。
「美緒…お前…っ…
なんでここに来たんだ!!」
『なんでって…
零くん達が心配だったからに決まってるじゃん!」
「この馬鹿!!
危険だからお前に睡眠薬を飲ませて来れないようにしたのに
どうしていつも大人しくして待ってられないんだ!」
『ちょっと!なにその言い方!!
そんな傷だらけでボロボロのくせに!!
私が助けてあげなかったら、零くん今頃死んでたかもしれないんだよ!?
お礼を言われるのは納得できるけど、馬鹿にされる筋合いはない!』
「別に僕1人でも対応できた。
それをお前が出しゃばってきたんだろ?」
『嘘だね!諦めかけて目瞑ってたの見たもん!!』
「っ、なんでそんなところまで見てるんだよ!
そもそもなんでもう起きてるんだ!?
普通は明日の朝まで眠ってるはずだぞ!」
『ずっとガラスの中にいただけだよ?
そんなに動いてないから疲れてないし眠れるわけないじゃん!』
私が零くんにそう伝えると、彼は唖然とした表情をしていた。
「それでももっと眠るはずなんだが…
僕は美緒のことを甘くみすぎていたようだな…。」
『言ったでしょ?私、お姫様なんかじゃないの。
大人しく帰りを待つだけなんてできないよ。』
私は零くんの頬に手を伸ばし
彼に触れた途端、その温もりが手を通して伝わってきて
零くんが無事だったことに安心し、私の目から涙がボロボロと流れ出た。