第53章 昔話
side 松田
俺が渡した水の中に
睡眠薬が入っているなんて疑いもせずに水を飲み干した美緒は
今は俺の腕の中で気持ちよさそうに眠っている。
本当はこんなことしたくなかったけど、
放っておいたら何をするか分からない美緒を心配して
ゼロは俺にこいつを眠らせるよう指示を出してきた。
俺は美緒の寝顔を見つめながら
さっき話した会話を思い出していた。
3年前…俺がゼロの代わりに犯人にボコられていたら
同じように怒ってくれると言ってくれたが
きっとその言葉に深い意味なんて何もない…
あくまで友達として怒ってくれるんだろう。
俺のことを少しでも考えて欲しい…
意識して欲しいって思ったら
勝手に口が開いて美緒に気持ちを伝えていた。
困らせるのを分かってて伝えるなんて最低だよな…。
大事なダチの恋人に告白するなんて自分でもどうかしてると思う。
しかもまた美緒にキスしちまった…
今度はさすがに美緒も覚えてるかもな…。
俺は罪悪感に苛まれ、胸が押しつぶされそうな気持ちのまま
美緒を抱き抱えて地下シェルターを後にした。
車に美緒を乗せてある場所に向かい、そこに美緒を預けてから
俺は班長達と合流する為、渋谷に向かって車を走らせた。