第52章 人質
「何か必要な物があれば言ってくれ。
出来るだけ用意するから。」
『うん……。ありがとう、零くん。』
今回は彼の優しさに甘えよう…。
こんな爆弾付けられている状態で外に出るわけにもいかないし。
零くんに促されて強化ガラスの中に入った。
これから首輪の爆弾が外れるまで、彼に触れることは出来ない…。
死への恐怖よりも、そっちの方が私にとって苦痛だ。
ガラスの中には椅子とテーブル、
ガラスの外側にいる人との連絡を取るための電話が置かれていた。
零くんが外で受話器をとると、
ガラスの中に置いてある電話が鳴り、私は受話器を取った。
「美緒…面をつけた奴は
あの5人によろしく、って言ってたんだよな?」
『うん。ロシア語で言ってたけど間違いないよ。
私の知り合いで5人組って言ったら、零くん達しかいないもん。』
「わかった。
あいつらも狙われるかもしれないから一度ここへ来させて話をしよう。」
零くんはスマホを取り出して部下の人達に連絡を取り
松田くん達をここへ連れて来るように指示を出していた。
「あいつらが来るまで2人の時間を堪能するか。」
『ふふっ、そうだね。』
爆弾さえなければ、彼とくっついて話が出来るのに…。
本当に厄介なものをつけられたな。
「美緒の職場の人達には連絡しておいたからな。」
『いつの間に……本当に仕事早いね。』
「まぁな。」
『ちょっとは謙遜しようよ!』
「本当のことだからな。」
『…。』
零くんは私の職場の人に
爆弾を取り付けられたことは話したらしい。
余計な心配をかけたくなかったけど
零くんと東社長は、お互い嘘をつかないと約束をしているらしく
正直に話したそうだ。
「爆弾が外れたら死ぬ気で働いてもらうって言ってたぞ。」
『もちろん!私もそのつもりだよ?』
「お前は本当に今の仕事が好きなんだな。」
『零くんだって仕事好きでしょ?』
「…確かにそうだな。」
2人で笑い合いながらいつも通りの会話をしていると
死ぬかもしれない恐怖を全く感じないから不思議だ。
私にとって零くんは
どんな薬よりも効く精神安定剤だな。
しばらくそのまま電話で話していると、
エレベーターが動く音が聞こえた。