第52章 人質
『犯人の狙いは零くん達でしょ?
私は…みんなを失うことの方が怖いから…。』
「僕だって同じだ。
美緒を失うかもしれないって考えると怖くてたまらない…。」
零くんは私を優しく抱きしめてくれたけど
彼の腕は少し震えていた。
「…犯人は絶対捕まえる。」
『うん…。信じてるから。』
その後2人で廃ビルを出て零くんの車でしばらく走った後
街中にある一軒のビルに入った。
エレベーターで地下に降り、
大きな箱型のガラスが置かれている場所にやって来た。
「ここは公安が所有している地下シェルターだ。」
『すごい…。
これ特殊強化ガラスだね。』
コンコン、とガラスを叩きながら零くんに尋ねると
例えこのガラスの中で爆発が起きても
外にいる人間は無傷で電波も遮断する事を教えてくれた。
「美緒、
お前にはしばらくの間ここに入ってもらう。」
『はーい。たまには様子見に来てくれる?』
「こんな状態のお前を1人にするわけないだろ。
僕はできるだけここにいるつもりだ。」
『え…でも…ポアロの仕事だってあるのに。』
急に休んだりしたら梓さんに怒られない?
「美緒はそんなこと気にしなくていい。
上手くやるから心配するな。」
『…ごめんね。
こんな人質みたいな足手纏いになっちゃって…。』
子供を助け出せた事は良かったけど
もう少し上手くやれば犯人を捕まえる事もできたかもしれない…
そう考えると、零くんに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
俯き加減で謝罪すると
零くんはわたしの顎を掴み上を向かせると唇に優しくキスを落とした。
『零くん…?』
「僕はお前の事を足手纏いなんて思っていない。
むしろ僕達のせいで美緒が狙われたんだから
悪いのはこっちだ。お前が謝る必要なんてないだろ。」
『でも…』
「でもじゃない。
何でも自分のせいにしようとするところ、美緒の悪い癖だぞ。」
わたしの頭にポンと手を置く零くんの手は
暖かくてとても優しかった。