第49章 火事
階段を駆け降りて、近くにあったトイレに向かったが
零くんは見当たらなかった。
『零くん!……零くん!!どこにいるのー!?』
周りは煙がすごくて視界が悪い…!
それに火もすぐそばまで迫っている…。
『…ごほっ、…ごほっ………。』
早く見つけないと、2人とも焼け死ぬ……
そう思っていると
どこからかガン!ガン!、と何かを叩き付けるような音が聞こえてきて
音を頼りに一つの部屋の扉の前に辿り着いた。
『…!零くん!?ここにいるの…!?』
扉の前で呼びかけると先程と同じ音が聞こえたので
私は扉を蹴破って中に入った。
そこは倉庫のような部屋で扉から少し離れた先には
柱に腕を回し手錠で繋がれている零くんを見つけた。
『零くん…っ!!良かった!』
「美緒…お前なんでここにいるんだ!早く逃げろ!!」
『風見さんから連絡もらったの。
零くんも一緒に逃げるよ!』
「僕は手錠で繋がれてるんだ…お前だけ先に避難しろ!」
『私が零くんを置いて行くわけないでしょ!
心配しなくても、手錠の鎖ならこれで切る。』
私はそう言って腰あたりにしまっていた拳銃を取り出した。
「っ…、お前それ…どうしたんだよ…。」
『犯人の警備員の男が持ってたのを拾った。』
「…はぁ……拳銃持ってるなら先に言えよ……。
…頼む。」
『久しぶりに撃つから、腕鈍ってるかもよ?』
「早く撃ちたくてウズウズしてるくせに。」
『…あ、バレてた?』
「バレバレだ。
……僕はお前を信じてる。外すなよ?」
零くんは私の目を見て笑ってそう言ってくれた。
私も彼に微笑み返し、零くんの後ろに周り銃を構えた。
その瞬間、昔のことをふっと思い出した。
警察学校にいた頃、零くんと射撃の腕を競い合ったことがあったな…
結局2人とも射撃の試験結果は満点で
決着つかずだったけどね。
一旦呼吸を整えてから手錠の鎖に照準を合わせ
引き金を引いた。
バン!と音がしてから確認してみると
外す事なく手錠の鎖を打ち抜けていたので零くんを解放させることができた。