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《降谷夢》bonheur {R15}

第49章 火事



「本当は今日……
俺の妹がここのステージでバイオリンを弾くはずだったんだ!
それをそこにいる女が……妹を事故に見せかけて殺した!」

皇「それは違います!誤解ですよ!
私は……亡くなったあの子と親友だったんです!殺してなんかいません!!
それに今日の演奏会はあの子が自分で辞退したの!」

「嘘をつくな!!
今お前が持っているバイオリンは名器で妹の形見だ!
お前が殺して奪ったんだろ!」


男はヒステリックに声を荒げていて
皇さんの様子を見るが、とても嘘をついているようには思えなかった。



「…聞いて下さい……。
あなたの妹は…突発性難聴という耳の聞こえが急に悪くなる病気にかかってしまったんです…。
治療に専念する為に演奏会は辞退して、代わりに私を推薦してくれたの…。」


突発性難聴……

確かその病気は発症後すぐに治療しないと耳鳴りが残ったり
最悪の場合は聴力を失うこともある。



『音楽家にとって聴力を失うのは致命的ですからね…。』


皇「はい…。
確かに彼女が亡くなった日、私も一緒にいました。
でも……本当に事故だったんです!
まさか歩道橋から転げ落ちるなんて思わなかったの…!
打ち所が悪かったみたいで病院に着く頃にはもう…っ……。」


「そんな話信じられるか!
どうせお前の作り話だろうが!!」


『!!あなたバカじゃないの!?
皇さんは自らの危険を顧みずにあなたの妹にもらったお守りをここへ取りに来たの!
それくらい今でも彼女の事を大事に思ってるんだよ!」


男はやはりそう簡単に信じようとはしなかったが
私の発言によって先程よりも拳銃を持つ手が震えていた。



皇「彼女が亡くなる前………もし自分に何かあったら
代わりにこのバイオリンを使って私に演奏会に出て欲しいと頼まれていたんです。
演奏会が終わったら、このバイオリンはあなた達家族の元に返すつもりでした。…私にはあの子がくれたこのお守りがありますから。」


皇さんがそう言って取り出したのはバイオリンの駒。
駒はブリッジとも言い、弦を支え振動を伝えるための部品だ。


皇「2人で使い古した駒を交換して
お互いのお守りにしてたんです。」


皇さんがそう言うと、男は拳銃を手から離して涙を溢しながら床に座り込んだ。


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