第49章 火事
2人の目を見てお願いすると
松田くんはわたしの真剣さが伝わったのか
ため息をつきながら道を開けてくれた。
松「……お前…本当に頑固だよな…。」
『……ごめん…。話してる時間勿体無いから行くね。』
佐「美緒先輩っ!!」
私は皇さんの手を引いて控室まで走った。
通路にはまだ火と煙は回ってないけど、煙の匂いが強くなってきているからここが燃えてしまうのも時間の問題だ。
控室に到着し、皇さんが自分のカバンから忘れ物を抜き取って
避難しようと出口に体を向けたら
1人の男性警備員が控室に入ってきた。
「こんな所で何をしてるんですか!?
早く避難して下さい!!」
皇「あ、はい!すみません!
すぐ行きますから………、え…?若山さん?」
わたしは警備員に近づこうとした皇さんを手で制して
彼女の前に立った。
『……あなたですよね。
皇さんに脅迫状を送り、ゴミ箱に爆発物を仕掛けたのは。』
「っ、何言ってるんですか?
どうして僕がそんなことを。」
『…爆発物を仕掛けられるのは、警察を除いた内部の人間だけ。
演奏会が始まる前、演奏者の皆さんはトイレに行く以外で一度も控室を出ていませんから。
それに、爆発した東と南側の通路の見回りをしていたのは警備員であるあなたですよね?もし他のスタッフがそんなとこに現れたら、
流石に警察の人は不審に思います。』
「…。」
『あなたがどうして皇さんを狙うのかは分かりませんが
大人しく自首して頂けませんか?』
「…自首……?冗談じゃない!!
俺はその女を殺しにきたんだ!俺の妹を殺したその女をな!」
警備員の男は被っていた帽子を床に叩きつけて
懐から拳銃を取り出した。