第49章 火事
全ての曲の演奏が終わると観客から大きな拍手が上がり
演奏者の人達がお辞儀をしてステージ袖に戻ろうと歩き出してきた途端、
耳につけていたインカムから連絡が入った。
「こちら一階東側通路!
通路に置かれていたゴミ箱が突然爆発しました!」
「こちら一階南側通路!
同じくゴミ箱が爆発し、すごい勢いで炎が広がって行きます!
スプリンクラーは作動しません!」
目「なに!?」
…爆発!?
ゴミ箱なんて分かりやすいところ
警察が調べていたはずだから見落とすなんてありえない…!
それに…
システムをいじってスプリンクラーを動かなくさせるなんて…
…内部の人間にしか出来ない犯行だ。
目「東と南側にいる捜査員は全員そこから退避して観客の避難誘導に回れ!」
「了解!」
その後すぐ館内の火災報知器が鳴り、観客がザワザワと騒ぎ始めた。
そして
火災が起きたので避難するよう館内放送がスピーカーから流れ
捜査員達は騒ぎ立てる観客を落ち着かせながら避難誘導を行っていた。
ステージ袖にいた私達は
演奏者達を避難させようと動くことになり、
私が皇さんの元に近づいたところ
彼女はそわそわとした様子で私に頼みがあると言って来た。
「若山さん…
避難しないと行けないのは分かっていますが…
控室に大事なものを置いてきてしまっているんです。
それを取りに行かせて下さい。」
『!!それは…無理です。
今は避難しないと本当に危険ですから。』
「お願いします!
亡くなった友人がくれた……大事なお守りなんです…!」
佐「…残念ですがそのお願いは聞けません。
諦めて下さい。」
皇さんがあまりにも必死な様子でお願いしてきたので
わたしは美和子ちゃんの言葉を無視して
皇さんに向き直った。
『……わかりました。皇さん、行きましょう。』
松「はぁ!?お前何言ってんだよ!!
行かせられるわけねぇだろ!何考えてんだ!」
『すぐ戻るから、みんなは先に避難してて。』
松「絶対だめだ!行かせねぇぞ!」
松田くんと美和子ちゃんは私の前に立ち塞がり
行手を阻んできた。
『…大丈夫。控室まですぐそこだし
こんなところで絶対死なないから……私を信じて。』