第49章 火事
零くんは私の腕を軽く引いて
ホール入り口から少し離れた場所にやってきた。
零くんの顔を見ると先程とは違い、少し真剣な面持ちになっていた。
『何かあったの?』
「実はな…今日ここの会場に
ある殺し屋が潜伏しているかもしれないという情報を掴んだんだ。」
『嘘……じゃあ零くんは公安の仕事で?』
私の問いかけに零くんは頷いていた。
まさか公安も動いていたなんて…
脅迫状を出した犯人がその殺し屋を雇ったんだろうけど
そこまで皇さんを憎む理由って何…?
頭の中で考えていると零くんは再び口を開いた。
「警護中に不審な奴を見かけたらすぐ僕に教えてくれ。」
『了解。協力者としての責務を全うしますよ、
ゼロさん?』
「…美緒にゼロって呼ばれるのはなかなかいいな。」
零くんの変な発言に驚いていると
零くんの唇が一瞬、私の唇に触れた。
『!!ちょっと!私仕事中!』
「顔を赤くして言っても説得力ないぞ。
それに、誰も見ていないから大丈夫だ。」
『…あ!だから防犯カメラの死角に連れてきたな!?』
「さあ?何のことだか分からないな。」
『〜〜っ!!』
惚け方がなんかムカつく!!
ジッと睨んでいると零くんは笑いながら去って行ったが
去り際に一言気をつけろと言っていた。
彼の一言で気を引き締め治してから
私は館内の見回りを終えて控室に戻った。
すると控室に残していった同僚の葉山が
皇さんと楽しそうに話しているのが目に入った。
葉「お、若山おかえりー。館内の様子はどうだった?」
『今のところ問題なし。事前に話していた通りだよ。
…それより葉山、皇さんに馴れ馴れしくしすぎ。』
葉「いいだろ別に!」
『だめ。』
葉「鬼かお前は!」
「あの…葉山さんは緊張している私をリラックスさせるために
話しかけて下さったんです。だからそんなに怒らないであげて下さい。」
『そうですか…?
無理して葉山を庇ったりしなくてもいいんですからね?』
葉「なんでお前はいつも俺にそんな厳しいんだよ!!」
…日頃の行いだよ。
警護対象者が女性の時はいつも口説こうとしてるじゃん!