第44章 追想
彼の説明によると
風戸先生は、手術用の手袋をはめて
前もって先端付近に穴をあけておいた傘を使い
女子トイレで佐藤刑事を撃ったとのこと。
その穴から銃を突き出して撃てば、
傘が火薬の粉や煙から身を守ってくれて
硝煙反応は出ず、手袋は男子トイレから流したというトリックだった。
…そっか……。
傘を使ったトリックだったから
前に蘭ちゃんが傘を差していたのを見て
私の体が震えちゃったんだ……。
風「そこまで見抜かれてしまったなら……
やはり、生かしてはおけないな。」
風戸先生はそう言うと
銃を持ったまま、私達が隠れている岩に近付いてきた。
コ「安室さん……何か手はある?」
「問題ない。水の流れる音が聞こえるだろ?
退路はすぐそこだ。もう少ししたら動く。」
コ「…!そっか、その手があったね。」
「美緒さん、僕達から絶対離れないで下さいね。」
安室さんはそう言いながら私の手を握ってきた。
そこで私はずっと疑問に思っていたことを口にした。
『あの…どうして安室さんは……
こんなに私のことを守ってくれるんですか?
この前も線路に飛び降りて、命がけで助けてくれましたし…
どうして……ただの友人の私にそこまでしてくれるんですか?』
安室さんは、そう尋ねた私の顔を見て一瞬驚いた顔をしたが、
すぐ笑みに変わって私の手を引っ張り走り出した。