第40章 心傷
「…うっ……!」
『っ!?美和子ちゃん!!』
銃を持った犯人は、そのまま2、3発美和子ちゃんを撃ったが
そのうちの一つの弾が逸れて水道の蛇口に当たり水が噴き出した。
そして、その噴き出した水が私にかかり、
水圧に負けて持っていた懐中電灯を手放してしまい、
宙を舞った懐中電灯は犯人の顔を一瞬だけ照らした。
……あの人…パーティー会場にいた……!
その人物はわたしにも銃を向けて発砲したがそれは当たらず…。
撃たれた美和子ちゃんが私にもたれかかってきて
支えきれなかった私は、そのまま一緒に床に倒れ込んだ。
犯人は銃弾を全て使い切ったのか
銃を投げ捨ててその場から立ち去って行った。
そしてようやく非常用の照明が灯り、女子トイレは薄暗い灯りに照らされた。
『…美和子ちゃん……?
美和子ちゃん…しっかり、して……っ。』
体を起き上がらせて見ると、
目の前には意識のない美和子ちゃんが横たわっていた。
水浸しになった床には、彼女の血が広がって行き
私の手も血まみれになっていた。
『……私の、せいで……美和子ちゃんが…。
私を庇ったせいで………っ…
なんで………なんで懐中電灯なんか……っ!!』
どうしてこういう時に限って
犯人の殺気に気づかないんだろう…。
暗闇で視界がはっきりしなかったのもあるが、
警察官がたくさんいるパーティーで襲われたりしないと
完全に油断していた。
結局私は……肝心な時にいつも大事な人を守れない…
血まみれで倒れている美和子ちゃんの姿が
かつての私の上司……
私を庇ったせいで亡くなった前田さんと重なって見えて
脳裏にはあの時の忌々しい光景が蘇り、ガクガクと手が震え出した。
『………わ、わたしの、せいで……
ご、めんな、さい……
こんな、の……いや…だよ……!
……いやあああああああ!!!』
ズキズキと痛む頭を押さえながら泣き叫び
私は気を失ってしまった。
しかし気を失う直前……彼の顔がふと思い浮かんだ。
零、くん……
助けて………