第38章 悋気
作ったご飯を一緒に食べながら、私たちは会話を楽しんだ。
ちなみに立花さんは
私に意地悪を言ってしまった事を謝っていたと零くんから聞いた。
やはりあの人は、公安の捜査官としてかなり優秀らしく
色恋沙汰で上司と部下の関係を拗らせたくなかったから
零くんはあまり邪険にすることができなかったと教えてくれた。
わたしはそれを聞いて、零くんらしくて笑ってしまった。
『今日はもう仕事戻らなくていいの?』
「ああ。やっと少し落ち着いたからな。」
あ、そういえば…
仕事というワードで思い出したけど、
わたしはふと気になった事を零くんに尋ねた。
『あのさ…
零くんの部下の人達、私に怒ってなかった?
この前稽古した時、投げまくっちゃったんだけど…。』
「いや?むしろいい勉強になったと感謝してたよ。」
…本当かな……?
あの時は立花さんの言葉にムカついて
全力で投げたり蹴ったりしてたから、完全な八つ当たりだったのに…。
『ごめんね…
零くんの部下の人達に少し怪我させちゃった。』
「気にしなくていい。
それより…僕も立花に嫉妬してる時の美緒が見たかったな。」
『…なっ!!そんなの見なくていいよ!!』
いきなり何を言い出すんだこの人は!!
葉山とか松田くんに酷い顔って言われたくらいだし
絶対醜い顔していたに決まってる!
「いつも僕ばかり妬かせられてるからな。
たまには美緒が妬くところを見てみたい。」
だから見なくていいって!!
『……私だって嫉妬くらいするよ…。
零くんかっこいいし、私には勿体無いくらいだもん。』
少し小さい声で俯きながらそういうと、
零くんは私の鼻を摘んできた。
「…あんまり可愛いこと言うな。
食事中なのに襲いたくなるだろ…。」
……それは困る。
目線を逸らして少し顔を赤くしている零くんは
きっと照れているんだろうなって思った。
『照れてる零くん可愛い。』
「僕にそんなこと言うのはお前くらいだよ。」
じゃあ他の人は零くんのこんな顔知らないんだ。
私だけ見ることができる顔だと思うと
自分が零くんの特別なんだって実感することができて嬉しかった。