第38章 悋気
零くんは順を追って話してくれた。
私と街中ですれ違った時は
立花さんのスーツを買うために
零くんのおすすめのスーツ店に付き添いで行ったらしい。
零くんにとってはあの時も仕事中のつもりだったから
私に声はかけなかったとのこと。
部下の管理も仕事のうちってやつだ。
そして昨日は、風見さんの代わりに
協力者から情報を受け取るため、仕事で立花さんとホテルのバーに行ったらしい。
そこで立花さんがお酒を飲みすぎてしまい、
家まで送って行ったとのこと。
「立花の気持ちには気づいていたが、
あの時は不意打ちで避けきれなかった……。」
確かに零くんからキスしたわけじゃないし
すぐに引き剥がしてたから
そうなんだろうなとは思ってたけど……。
「マンションの部屋の前まで彼女を送って行って
その時に告白されたが、ちゃんと断った。
部屋には上がってないし、少し話をしてすぐ帰ったよ。」
『そっ、か…。』
零くんは説明し終えると、
そのまま私の顔に手を伸ばしてきた。
「僕のせいでたくさん泣かせたよな…
本当に…ごめん。」
『…もう他の人とキスしたり腕組んだりしない?』
「絶対しない。約束する。」
『じゃあ……もし約束破ったら零くんの顔に回し蹴りするからね!』
「…っ、……許して…くれるのか?」
『確かにあんな場面見たから悲しかったし取り乱したけど…
私が零くんを好きな事は変わらないよ!
…正直に話してくれてありがとう。』
私がそういうと、零くんは苦しいくらいキツく私を抱き締めてきた。