第37章 待伏
風「立花には先程、私の代わりに降谷さんが行くと連絡しておきました。よろしくお願いします。」
「分かった。…一つ貸しだからな。」
僕は風見の返事を聞かず車を降りて
立花が待つホテルのロビーに向かい、彼女と合流した。
そのまま2人でバーに入り、カウンター席に座ると
すぐに男性のバーテンダーが近づいてきたのでお酒を注文した。
「バーボンをロックで。」
「私はジントニックをお願いします。」
「かしこまりました。」
僕達の頼んだお酒が運ばれてきて
バーテンダーの彼は僕のグラスの横にUSBメモリを一緒に置いた。
「ありがとう。助かるよ。」
僕がそのバーテンダーに礼を伝えると彼は会釈だけをして去って行った。
先程USBを渡してきたバーテンダーの彼が
実は公安の協力者で僕とは顔馴染み。
公安警察が目をつけている人物がこのホテルに滞在している情報を掴んだので
ここのバーを利用した際は、監視カメラの映像を渡して欲しいと頼んでいた。
USBを受け取るだけの仕事だから立花1人でも余裕だと思われるが、
女が1人でバーにいると少し目立つし
逆に男が1人だと警戒される可能性もあるので
今回のように恋人を装うのが1番安全で目立たない為
よく利用する手段である。
仕事が済んだ以上、ここに長居する理由はないが
すぐに帰ると他の客に不審に思われるかもしれないので
とりあえず注文した一杯の酒を程よく時間をかけて飲み干した。
隣に座っている立花のグラスも空になっていたので
そろそろ帰ろうと声をかけようと思ったが
先に彼女の方から口を開いた。