第36章 最悪
side 松田
美緒の様子がおかしかったのはすぐ気づいた。
いつもより顔色が悪いし
思い悩んだような表情をしていたから。
あいつのことをずっと見ていたから
そんな些細な変化にも気づいてしまう俺は
きっとまだ、美緒のことを諦めきれてないんだと思う。
美緒に元気になって欲しくて飲みに誘い
帰る頃には少し元気になったようで安心した。
しかしその矢先、
偶然見かけた美緒の恋人でもあるゼロの奴が
他の女とキスしていた。
俺はすぐあいつらの元に行こうとしたが
美緒に必死に止められて…
泣きながら大丈夫だという美緒を見た時、
本気でゼロをぶっ飛ばしたくなった。
俺は……ゼロが美緒を大事にしてくれると思ったから
身を引いて諦めようとしていたのに……
こんなに悲しそうな美緒を見るのは初めてで
あいつのことが許せなかった。
公園に移動してからも美緒はずっと悲しい顔をしていて
俺はそんな表情を見たくなくて、自分の腕の中に閉じ込めた。
初めて美緒を抱きしめたが、
体力ある割にめちゃくちゃ細くて
強く抱きしめると壊してしまいそうなくらいだった。
俺の腕の中で泣きまくっている美緒が
すごく愛おしくて……離したくねぇと思った。
それに……こんなにも美緒に思われているゼロがすげぇ羨ましかった。
美緒はそのまま泣き疲れて眠ってしまい
俺はスマホで萩原に電話をした。