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《降谷夢》bonheur {R15}

第36章 最悪



「ほら、いっぱい泣いたから喉乾いただろ?飲めよ。」


松田くんは私に冷たいお茶を渡してきた。

いつの間に買ったのか驚いたが、
わたしはお礼を言ってありがたくもらうことにした。

「さっきの女、知ってる奴か?」
『…うん。零くんの部下で、公安の女刑事だよ。』
「なるほどな…。」

たぶんわざわざ言わなくても
立花さんは零くんのことが好きでキスしたんだと
松田くんにも分かったようだった。


『松田くん…さっき私達が見たこと、零くんには言わないで?』

「……なんでだよ。
お前が元気なかったのも、あの女が原因なんだろ?」

『っ、それは……』
「やっぱりそうか。だったら尚更そのお願いは聞けねぇよ。」

なんで……!?
私が驚いていると、
松田くんは真剣な顔で私を見つめてきて話し出した。


「俺、あいつに言ったんだよ。
美緒を泣かせたりしたら許さねぇって。」

『…。』

「お前が幸せならそれでいいと思ってる。
でも……あいつのせいで泣いてるお前を俺は放っておけねぇから
あいつをぶん殴ってやらないと気が済まねぇ。」

松田くんはそう言って私の腕を強く引き、わたしのことを抱きしめた。

『っ……松田くん…。』

「辛いなら泣いとけよ。
お前が泣き止むまで、ずっとそばにいるから。」


松田くんの腕の中はタバコの香りがするけど
とても暖かくて……
私の凍りついたような心の痛みを溶かしてくれているようだった。


『……っ、ごめん…ね、松田くん……』
「ばーか、お前は悪くないだろ。謝るな。」


松田くんは昔と変わらず本当に優しい人だ。
間違ったことをしたら本気で叱ってくれるし、
いつも私のことを気にかけてくれている。


そんな彼の優しさに甘えていいのか迷ったが、
この時ばかりは限界だった。
零くんが私以外の女とキスをしたという事実が受け入れられなくて……


すごく……悲しかった。





わたしは彼の腕の中で涙が枯れるんじゃないかってくらい泣いた。

子供みたいに泣きじゃくる私を、松田くんは何も言わずにずっと背中をさすったり、頭を撫でてくれていた。






そのまま何時間か泣き続け
わたしはいつの間にか泣き疲れて眠ってしまったようで
目が覚めると自分の部屋のベットで横になっていた。

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