第36章 最悪
立花さんは少し酔っているのか
零くんにもたれかかりながら
肩を抱かれ、支えられている状態で立っていた。
くっついている2人なんか見たくなかったけど、なぜか目を逸らせなくて…
零くんは優しいから、きっと部下の介抱してるだけだと
私は必死に自分に言い聞かせていた。
でもやっぱり自分の彼氏が
私以外の女の人とくっついてるのは嫌で….
早く離れて……
そう思いながら2人を見ていると
零くん達は真剣な顔で見つめ合っていて
立花さんが急に零くんの襟元を掴み、キスをした。
『…っ!!』
頭を鈍器で殴られたような気分になった……
悪夢なら
醒めて欲しい……
零くんからじゃないとはいえ、あの2人はキスをしてた…。
そして2人は
そのまま寄り添うように近くのマンションに入って行ってしまった。
2人の姿が見えなくなると
私と同じようにその光景を見ていた松田くんが声を荒げた。
「っ、あいつ!!何やってんだよ!!」
松田くんは彼らの元へ行こうとしていたので
私は松田くんの腕を必死に掴んで止めた。
『だめだよ松田くん!仕事中かもしれないじゃん!』
「そんなわけねぇだろ!!離せ美緒!」
『っ、松田くん!!私は……大丈夫だから!!』
私が少し大きな声を出すと、
松田くんの腕から力が抜けるのを感じたので、私は彼の腕から手を離した。
「何が……大丈夫なんだよ…。泣いてんじゃねぇか…。」
悲しい顔をしていた松田くんにそう言われて
わたしは自分の目を擦り、必死に涙を止めようとした。
『…ごめ、ん。
大丈夫…っ…すぐ止めるから…。
っ…あれ…?おかしいな…全然……止まってくれない……。
…あー…もう……最悪だよ…………。』
拭っても拭っても涙は溢れ出てきて
さっきの光景が目に焼きついて離れてくれなかった。
さっきまで落ち着いていたはずのわたしのモヤモヤは
再び悪化してしまったようだ。
「美緒……ここじゃ人目につくから少し移動するぞ。」
松田くんに手を引かれて少しの間歩いていると
人気のない公園に到着した。
夜ということもあり、周りはすごく静まり返っていて
私たちは電灯の下にあったベンチに座った。