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《降谷夢》bonheur {R15}

第35章 強盗





こんなモヤモヤした気持ちをしている時に
ツーショットは見たくなかったな…。



2人も私にすぐ気づいていたようだが、
わたしは2人を見ないようにしてそのまますれ違った。
仕事中かもしれないし、
何より並んで歩いている2人を視界に入れたくなかった。


なんだか
すごくお似合いのように見えちゃったから……。



すれ違って少し歩いてから2人のことを振り返ってみると
先ほどよりも2人の距離が近づいていて
零くんの左腕に、立花さんの右腕が絡まっていた。



…っ……。…大丈夫……。


きっと恋人同士にみえる練習でもしているんだ…。





そう自分自身に言い聞かせて仕事場まで歩いたけど
心の中のモヤモヤは先程より悪化していた。



仕事場に着いてからは余計な事を考えないように業務に集中した。

警護対象のオーナーは女性で、
以前、オーナーをお金目当てで狙ってきた不審者を
私が撃退したことがあり、それ以来私の事をとても気に入ってくれている人だ。


『オーナー、今日はよろしくお願いします。』
「美緒ちゃん久しぶりー!こちらこそ、よろしくね!」

今日はオーナーが所有している会社をいくつか回るので
その付き添いをする仕事だ。


車を運転するのはオーナーの秘書で、わたしは助手席に乗り込んだ。


「なんだか美緒ちゃん、少し痩せたんじゃない?
顔色も悪いし……大丈夫?」
『ご心配おかけしてすみません…。
お陰様で忙しくさせてもらってるので、時々食事まで気が回らないことがあるんですよ。でも、体は元気なので大丈夫です!』

「そう?…あなたには助けてもらった恩があるし、
もし悩んでることがあれば、いつでも相談してね?」

『…ありがとうございます。』


…悩み、かぁ。



自分の彼氏が
他の女性と恋人のフリをしていたのを目撃してしまって
めちゃくちゃ嫉妬しましたーなんて、

醜すぎて言えるわけない……。


頭では仕事の内なのかもしれないってわかってるのに
心がそれに追いついて行かないから
わたしはずっとモヤモヤしているんだ。



そんな事を車内で考えていると
車は目的地に到着した。



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