第34章 特訓
開始から5分後……
立「……はぁ、っはぁ……。」
『大丈夫ですか?だいぶ息が上がっているようですけど。』
立「あなた…私のこと馬鹿にしてるの!?
避けるだけで…なんで一度も攻撃を仕掛けてこないのよ!」
『…っ、それは……』
立「正直あなたにはがっかりしました。
協力者としてとても優秀で、体術も相当なものだと聞いてたのに逃げ回るだけで手を抜くなんて!」
…。
『はぁ……そこまで言うなら…
こちらからも仕掛けますよ。』
私がそう言うと立花さんは構えて
引き続きわたしに攻撃を仕掛けてきたが
避けて隙ができた途端に彼女の襟元を掴み、背負い投げをして彼女を畳に叩きつけた。
立「っ!…うっ…。」
横になったまま悔しそうな表情をしている立花さん。
私は彼女の手首を掴んで道着の袖をめくると
腕には湿布と包帯が痛々しく巻かれていた。
『やっぱり右手怪我してたんですね。』
立「…っ、なんで……いつから…?」
『更衣室で会った時からです。
立花さん右利きなのに、わざわざ左手で更衣室のドア開けていましたよね。
…本当は腕を動かすだけで痛いんじゃないんですか?』
立「…それで手を抜いてたってわけ?」
『怪我人相手に本気になるほど
人として落ちぶれてはいませんので。』
私がそう言うと、立花さんは無言で立ち上がり
わたしに向き合った。
立「…今回は、わたしの負けでいいわ。
でも…次は負けないから。」
そのまま立花さんは出口の方に歩いて行ったが
急に足を止めてこちらに振り返った。
立「あなたとは恋のライバルでもあるから…
これから覚悟しておいてね?」
わたしの顔を見てそう言い切ると、立花さんはすぐに立ち去って行った。