第34章 特訓
風「お疲れ様でした。
さすが元SPですね。まさか全員見つけられるとは…
恐れ入りました。」
『いえ…。正直かなり疲れました。
組み手の前に少し休暇もらってもいいですか?』
風「もちろんです。30分後に5階にある武道場まで来て下さい。
よろしくお願いします。」
『分かりました。』
かなり神経使った後に今度は体術の特訓か。
しかも公安刑事を相手に…。
…わたし今日で死ぬかもしれないな。
そう思いながら、とりあえず着替えをするために
体育館内にある女子更衣室に向かってそこで休憩を取ることにした。
先に着替えを終えて、お茶を飲みながら休憩していると
1人の女性が更衣室に入ってきた。
その女性は座って休んでいる私に向かって歩いてきて
私の目の前に立った。
『…?あの、何か?』
「尾行ではやられましたけど、体術では負けませんから。
現職の警察官が、民間企業勤めのゆるい女性に簡単にやられるわけにはいきませんので。」
…ああ、そうか。
この人が尾行中に私を鋭い視線で見ていた女性か。
口調からして私のことが気に入らないのだと思う。
なんで嫌われてるのかは分からないけど…。
『心配しなくても、手を抜いたりなんかしませんよ。』
「別に心配なんかしていません。私達が負けるわけありませんから。」
それだけ言うとその女性は出て行き
私は更衣室内で再び1人になった。
『……。これは…喧嘩を売られたのかな…。』
女性から嫌味を言われるのは警察学校時代からあったし
嫌われるのは慣れてはいるんだけど…
あんな風に真正面から喧嘩を売られたのは初めてだった。
きっとあの女性はかなり優秀な公安刑事なんだろう…。
そうじゃなかったら、あんな自信満々に突っかかってこないと思うし…
ちょっとめんどくさいことになりそうで憂鬱だが
そろそろ休憩が終わる時間になってしまったので
わたしは重い腰を上げて、更衣室を出て武道場に向かった。